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MECTのここが激アツ!!!!

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Vol.6

自慢の流路と驚きの自動化

金型の可能性を発見!

サンプルワークのイメージ

医療機器といっても幅は広い。思い浮かびやすいのは診断機器や手術用具だろう。当然、それ以外にも多くある。コンセプトゾーン(CZ)に協力する狭山金型製作所(埼玉県入間市、大場総一郎社長)は、医薬品などの検査や実験用の機器から医療産業への道を切り開いた。会場ではその肝となった「マイクロ流路」を設けたサンプルワークを射出成形する。さらに、ワークを取り出す協働ロボットのハンドごと金型を閉める驚きの工法で、次工程の自動化も実現した。

金型と成形技術を
目にする貴重な機会

「サンプルワークにわが社の技術を詰め込んだ」と力説する大場祐太郎取締役

「サンプルワークにわが社の技術を詰め込んだ」と力説する大場祐太郎取締役

CZのBゾーンでは「医療に生かす金型メーカーの技」をテーマに、狭山金型製作所とファナックの協力で、射出成形を実演加工する。
 工作機械見本市の会場では、出展者も含めて、金属の切削加工の実演は多い。しかし、金型を使った射出成形の実演は、なかなか見られるものではない。来場者にとって、微細精密な金型を使った成形技術を目にする貴重な機会となるだろう。

会場では、狭山金型製作所が医療向けに得意とするマイクロ流路などを搭載した厚さ2mmのプレート状のサンプルワークを成形する。裏面にフィルムを張ると、実際に使える形状だ。
 大場祐太郎取締役は「医薬品の開発現場では、倫理面から動物実験が年々難しくなっている。そこで、生体模倣システム(MPS)に注目が集まる。欧米を中心に、人の毛細血管や臓器の内部構造などをイメージしたマイクロ流路や複雑形状を実験機器に搭載して代替する潮流になっており、需要が拡大している」と語る。

同社は、コネクターなどの電子部品や半導体関連部品などの微細精密な金型の開発設計から製作、射出成形までの一連の事業を手掛ける。企画開発の段階から顧客への提案や相談を繰り返して、成形品の付加価値を高めていく形を得意にする。

微細精密な金型の加工技術や提案型の進め方を生かせる分野として、2009年からは医療産業への参入を本格化させた。海外も含めた展示会などでアピールを続け、数年の苦労の末、初めて受注できたのが検査キットだった。そこから実績を積み重ね、今では血管に埋め込む治療器具など人体に直接使う機器も手掛けている。

1mm以下の技術を
惜しげもなく

実際に試薬を入れたイメージ

実際に試薬を入れたイメージ

今回のサンプルワークには、2本のマイクロ流路と複雑形状の流路を盛り込んだ。
 2本あるマイクロ流路はともに幅0.1mmで、途中で十字に交差する。その交差部分の角のカーブ形状(R)は0.015mmを誇る。

もう一カ所では、成形の難しい形状をいくつも取り入れて一つの流路を作った。
 薬剤などを投入、排出する「ルアーポート」の2つを一体成形した。一般的に、ルアーポートはプレート本体から飛び出る形状で高さがある。樹脂の充填(じゅうてん)が難しいなどの理由から、成形後に別工程で取り付けることが多い。それを一度の成形で形作る。
 また、ルアーポートから薬剤を流路に送り込む穴は直径0.3mmと細い。これを極小ピンで形成する。厚さ2mmのプレート全体を成形する際に樹脂を充填するための圧力は高い。それに押し負けてピンが曲がらないようにする独自の金型と成形技術のノウハウを生かした。
 さらに、臓器などに薬剤が行き渡る姿を模倣するには斜面のある流路が必要だ。そこで培った技術を生かし、0.1mm~1mmの深さが変わる傾斜を持つ流路をプレートに採用した。
 「それら複数の形状を含む樹脂プレートを透明なまま成形するのも、また難しい。わが社の技術を凝縮したサンプルワークができた」と大場取締役は自信を見せる。

ロボットハンドを金型で挟む!?

今回のサンプルワークと、各部の名称や展示での見どころ

今回のサンプルワークと、各部の名称や展示での見どころ

注目すべきポイントは、他にもある。それが現在、特許出願中のゲートカットの自動化だ。
 樹脂成形では、充填時の樹脂の流路となるランナーも成形される。製品や部品としては不要なため、一般的には後工程で切り落とす。

このゲートカットを自動化する。今回のシステムでは、ファナックの協働ロボットが成形品を取り出す。金型には成形部と別箇所にゲートカット用の切れ刃を搭載。さらに、ロボットハンドの位置決めをガイドするへこみがある。
 ロボットハンドに成形品を持たせたまま、次のワークを成形する型締め動作に移る。その金型を閉じる際に、ロボットハンドがガイドに倣うようにすることで、毎サイクル正確に位置を決め、切れ刃が閉じてゲートカットする。ゲートカット後にはランナーが0.02mmしか残らず、高精度を誇る。外から見ると、ロボットハンドを挟み込んだまま、金型を閉める形だ。

「ファナックと共同開発したが、金型にロボットハンドごと挟み込む発想には驚かされた」(大場取締役)。マイクロ流路や極小部品は、MPSを中心に医療やライフサイエンスでの需要が高まるという。また、液体の実験に使えるので石油に代わる新エネルギー源の研究などにも使える可能性がある。さらに、ゲートカットの自動化技術は樹脂成形の全般に応用できる。
 それらを踏まえて、大場取締役は「医療以外の加工で参考にしてもらえる部分も多いと思う。医療関係者はもちろんだが、幅広い来場者にぜひ見てもらいたい」と話す。

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「医療の未来を創る新工法を発見!」
9月29日(月)公開

メイラは骨折治療に使われる整形外科用インプラントをイメージした2種類のMECTオリジナルワークを設計した。CZでは複合加工機によるオリジナルワークの加工実演を披露する。ワーク剛性を保つための工程設計の工夫や新工法「オービット加工」の活用など、ワークに盛り込まれたさまざまな技術に迫る。

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「MECTのここが激アツ!!!!」とは

本連載はMECT2025公式メディア「月刊生産財マーケティング」とのコラボ企画です。
MECT2025の出展者情報の他、恒例の主催者企画展示(コンセプトゾーン)や会期中に開催されるセミナーといった激アツな見どころをお届けします。また本連載は月刊生産財マーケティングにも掲載されます。

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